打ち水– category –
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打ち水
見上げた天井
会議室の椅子はいつも同じ硬さで並んでいる。 「大丈夫です」と微笑み声の高さは昨日と同じだった 天井を、一度だけ見上げた 水の雫が何百年もかけて石になっていく鍾乳洞 一滴の重さは、誰にも量れない洞窟の奥は、いつも同じ暗さのままだ 誰にも見せない... -
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魂の宿
火葬のあと、灰は拾わない骨を、拾う二人で、箸を添えてまだ熱いそれを、そっと ほかは、ぜんぶ還っていくのに骨だけは、手渡していく昔の人は、知っていたのだと思うその人の一番奥に何が住んでいたのかを 神様は、一柱、二柱と数える家の真ん中には、大... -
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渡せない一室
電話を切ったあとの部屋が、急にしんとする。あの静けさを、寂しさと呼ぶ日もあれば、ほっとする日も、ある。 分かってほしい、と思う。全部は無理でも、せめて芯のところは。けれど、どれだけ言葉を尽くした夜も、最後のひとつは、渡せずに残った。 人は... -
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祭りのはずれ
夜店の灯りは、まぶしい。けれどあの灯りの下で、ご飯を食べる人はいない。 画面の中は、いつも誰かの祭りだ。指でなぞれば、花火、乾杯、知らない海辺。スクロールする親指だけが、祭りのはずれで、冷えていく。 スマホを伏せれば、台所。火にかけた鍋が... -
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書けなかった欄
履歴書には、書ける欄が決まっている名前、学歴、資格、職歴書けなかったことの方がその人の大半なのに 竹は、はじめの数年、地上に出ない土の中で、ただ根を張っている外から見れば、何もしていない年月それを空白と呼ぶ人はいない 誰かの話を最後まで聞... -
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灯台
灯台は、海を照らしていない届くのは、せいぜい足元の岩まで沖の暗さは、暗いまま残る それでも灯台は、そこにいる海を明るくするはたらきではなくここに岩がある、とだけ告げるはたらき どうにもならないものの前で人にできることは、案外それに似ている... -
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夜のものさし
夜中に書いた手紙は朝に読むと、別のものになっている書き直したくなるのは朝の自分が正しいからではなく夜には夜の、ものさしがあるからだ 夜は、音が大きく聞こえる冷蔵庫のうなり、時計の針昼間は消えていたものが順番に、前へ出てくる あの日の言葉が... -
打ち水
在ったことの、かたち
引っ越した部屋で何もない壁に、日焼けの跡が残っていたそこに長く、何かが掛かっていた形のまま 失くしたあとは空っぽになったのではなくその形に、開いている 湯呑みが一つ減った食器棚返事のない方へ、話しかけそうになる口癖は、消えた後も、しばらく... -
打ち水
こちら側に存るということ
湯呑みを持つと、手が温まる。それだけのことが、画面の中では起きない。 言葉なら、向こうの方が速い。正しさなら、向こうの方が多い。比べる場所を間違えなければ、それは怖い話ではない。 こちらには、朝の喉の渇きがある。階段を上れば、息が切れる。...
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