こちら側に存るということ

湯呑みを持つと、手が温まる。
それだけのことが、画面の中では起きない。

言葉なら、向こうの方が速い。
正しさなら、向こうの方が多い。
比べる場所を間違えなければ、
それは怖い話ではない。

こちらには、朝の喉の渇きがある。
階段を上れば、息が切れる。
切れた息を、整える時間がある。

完璧な文章は、疲れない。
疲れないものに、休む夜は来ない。
眠って、起きて、少し治っている——
その繰り返しを、生きると呼んできた。

奪えるのは、仕事の形かもしれない。
けれど、今日のこの息の上がり下がりは、
どこにも渡しようがない。

生きている側に、いるから。

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