二十一、万法帰一の真実 〜すべては海へ還る〜

はじまりに、ひとつの因縁があった。雲から生まれた一滴の雫は、それぞれの渇きをうるおし、それぞれの川をつたって、長い旅をしてきた。

そして、たどり着いた地で出会うのは、すべての境を失くし、ただ一つの大きな水としてうねる、海だ。

別々の形をもち、別々の名を名のり、別々の痛みを抱えて巡ってきた雫たちは、海に落ちたその時、おのれの輪郭を、しずかにほどいていく。どこまでが己で、どこからが他か。そこにはもう、分けるための線も、競うための境も、ない。

すべては、ひとつの大きな現れであり、はじめから、おなじ一つの水であった。

掴もうと握りしめていた力は、ほどけて消え、ただ、すべてを抱いた、深いしずけさと、おだやかな満ち引きだけが、そこにある。

成し遂げる必要も、証して残す必要も、どこにもない。

旅を終えた雫が、しずかに海へ還り、またいつか、ひとしずくとなって、生まれてくるように。

いま、ここに、在る。