秒単位で流転する流行。正義や価値を激しく競い合う世論。次々と書き換えられる時代の常識。その濁流に取り残されまいと必死に泳ぎ、他者の視線という波に煽られては、心をすり減らし、身を強張らせていく。
だが、見よ。夏の砂漠に揺らめく陽炎(かげろう)を。光の悪戯によって、そこに実体があるかのように錯覚させるが、手を伸ばせば掴めるものは何一つない。一喜一憂している時代の狂騒もまた、一過性の熱がもたらした実体のない幻影に過ぎない。
移り変わる流行の波に、本質が揺らぐ理(ことわり)などどこにもない。外側の狂騒に巻き込まれ、何者かになろうと焦る必要はない。この陽炎の正体に気づいたとき、幻影は熱を失い、その奥にある不動の軸が現れる。そして、初めて時代の檻から脱し、自らの足で大地に立つ強さを手にする。
