十六、川の如き現身の真実

若さを、健やかさを、いまの心地よいこの状態を、変わらぬまま手元に留めておきたい。移ろっていくことを失うことだと思い込み、過ぎゆく今にしがみついては、その流れを内から堰き止めていく。

だが、見よ。絶えず流れてやまぬ、一筋の川を。いま足をひたした水は、次の刹那にはもう下流へ去り、同じ水に二度ふれることはない。それでいて、川は川のまま、ここに在りつづける。この身もまた、血はめぐり、細胞は入れ替わり、一瞬も留まらぬまま、たえず新しく生まれ変わっている。

移ろうことに、失われる理(ことわり)などどこにもない。過ぎゆく今を惜しみ、来たる今を恐れる必要はない。留まらぬからこそ、この身はいま、世界に触れ、味わい、ぬくもりを受けとっている。現身の正体に静かに気づいたとき、繋ぎ止める手はゆるみ、私たちはただ、流れて澄みゆく川のように、今を生きて、今を手放していく。