道の途上で交わす、すべての出逢い。激しく響き合った日々も、分かち合った約束も、永遠に繋ぎ止めようとし、形が変わることに怯え、去りゆく背中を追いかけては、過ぎた日の檻に己の心を閉じ込めていく。
だが、見よ。野をわたる、二つの風を。ある一点でふいにすれ違い、互いをわずかに揺らして、また別の方へ抜けていく。あらゆる縁もまた、それぞれの命がたまたま同じ場所を通り、ひととき行きあったに過ぎない。
すれ違って遠ざかるものに、己の値が損なわれる理(ことわり)などどこにもない。失うことを恐れて執着し、通り過ぎた背を追って立ち止まる必要はない。刹那の正体に静かに気づいたとき、追う手はほどけ、私たちはただ、行きあった風のぬくもりだけを残して、それぞれの方へ、また吹かれていく。
